日本ではこれまで、刑法の賭博罪および賭博開帳図利罪の規定でカジノを営業することはできませんでした。
しかし、2018年に国会で特定複合観光施設区域整備法(IR実施法)が成立したことにより、施行後は内閣府の外局のカジノ管理委員会(JCRC)から免許が交付されたIR事業者のみ、カジノを営業することができるようになりました。
きちんと利益を得られるどうかが疑わしい
今日までに複数の自治体が統合型リゾートの誘致に名乗りをあげていますが、各自治体内では住民による根強い反対がまきおこっており、定着できるかどうかは疑わしい状況になっています。
カジノを含む統合型リゾート施設の設置に反対される理由の一つとして挙げられるのが、「きちんと利益を得られるどうかが疑わしい」ということです。
日本では、リゾート開発においてとても苦い歴史があります。
1980年代後半から1990年代初頭にかけて到来したバブル景気では、1987年の制定された総合保養地域整備法(リゾート法)の影響もあり、建設業界や不動産業界、ホテル業界を中心に都市部から離れた地域でのリゾート開発が積極的に行われ、金融機関もリゾート開発をすすめている企業に成功をあてこんで積極的に融資をすすめていきました。
しかしバブルが崩壊すると、リゾート施設の利用客減少や不動産価格の下落など複数の影響により、融資を受けた企業は資金繰りが困難となり、金融機関も貸し付けた資金の多くが不良債権化しました。
リゾート開発事業に失敗した企業や彼らに融資を行った金融機関が複数倒産
1990年代後半になると影響が目に見える形であらわれ、リゾート開発事業に失敗した企業や彼らに融資を行った金融機関が複数倒産し、企業が所有していたリゾート施設の中には解体すら行われずに廃墟のまま残されるケースも少なくありませんでした。
統合型リゾートにおいては、事業者が事前に想定していた利益を得ることができずに撤退あるいは経営破綻し、施設だけが解体されないままで残されるといった、バブル期のリゾート開発の顛末が再来するのではないかという懸念がでており、誘致を推進している自治体の住民から反対される要因になっています。
一方で、メディアの報道が影響して、収益面より大きくクローズアップされるようになった反対理由が、「ギャンブル依存症を助長させる」という内容です。
ギャンブル依存症は、競馬・競輪に代表される公営競技やパチンコなどの遊戯に過剰にのめり込むことによって、何らかの治療が必要なほどに生活に支障をきたすようになる症状ですが、貧困を招くことや家族・友人・同僚らとの関係が損なわれることなど、良くない結果を招くのが頭では理解できているのにもかかわらず行為が繰り返されてしまう点で、他の依存症と同等かそれ以上に厄介な依存症といえます。
多くの人がギャンブル依存症の症状を抱えるようになる可能性がある
統合型リゾートでは、今までは法令による根拠がなくてプレーすることができなかったカジノゲームに参加できるようになるため、特にオープンして間もない時期に多くのお客さんが入店することが予想されます。
入店者が多くなるということは、それだけ多くの人がギャンブル依存症の症状を抱えるようになる可能性があります。
2000年代後半から2010年代前半にかけて行われたいくつかの調査で、日本は他の国と比べてギャンブル依存症およびその疑いを持つ者の割合が高いとする結果が得られており、ギャンブル依存症を減らし、無くしていくことは急務となっていますが、統合型リゾートの設置はこの流れに逆行するものであり、多くの地元住民から反対されています。
統合型リゾートの設置に反対される理由はこの他にも、施設周辺地域の治安悪化やマネーロンダリングの舞台にされるおそれがある点などが挙げられています。
仮に統合型リゾート施設の誘致に成功してカジノが設置されたとしても乗り越えなければならない課題は多く、経営がうまくいくかどうかは不透明です。